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人口の7割が男性になった世界はどうなるか

朝の通学路。
駅のホーム。
人の流れを、ぼんやり眺める瞬間があります。

そのとき。
もし周りの多くが男性だったら。
そう想像してみます。

制服の列も。
会社の出勤の波も。
公園のにぎわいも。
男の子や男性が、目に見えて多い。

最初は、ただの景色の違いに見えるかもしれません。
でも。
時間がたつほど、生活の手触りそのものが変わっていく気がします。

ここでは。
人口の7割が男性という世界を。
正しい結論に着地させず。
観測するように眺めていきます。

人口の7割が男性。
100人のうち、70人が男性で、30人が女性。
そんな状態です。

性比という考え方もあります。
女性100人に対して、男性が何人いるか。
それで偏りを測ります。

現実の世界では、国や年齢で差があります。
出生時は、男の子が少し多いと言われます。
だいたい男児105、女児100。
このくらいが目安として語られます。

生まれた直後の、病気のかかりやすさ。
成長過程の違い。
そういう要素も重なって、長い時間の中で均されてきた比率。

今回は。
その均され方が大きく崩れ。
しかも、それが長い期間続いた。
そう仮定します。

ただし。
男性と女性の価値がどちらが上。
そういう話にはしません。

平均身長や筋力の違いのような傾向はあっても。
個人差が大きいことは変わりません。

変わるのは。
数の偏りが、社会の仕組みに圧力をかける。
この一点です。

現実にも、完全に半々ではない場所がありました。
たとえば中国では。
2020年の国勢調査に触れた分析で。
人口全体の性比が、女性100に対して男性105.1。
出生の性比が111.3。
そんな数字が示されることがあります。

7割男性ほど極端ではありません。
それでも。
結婚や出産。
貯金。
働き方。
そうしたものへ影響が出る可能性が、研究されてきました。

男の子が多いと。
結婚相手を見つけにくくなる。
すると。
家が結婚のために貯金を増やす動機が強まる。
そういう分析もあります。

貯金が増えるのは、堅実に見えます。
でも。
集団として同じ方向に動くと。
別の場所で、歪みを生むこともある。

さらに。
男性が余る状態が、社会の不安定さにつながり得る。
そんな議論もあります。

ただ。
必ずそうなる、と決めつけないほうがよさそうです。
雇用や居場所の作り方次第で。
振れ幅が大きいからです。

ここから、社会への影響を見ます。

まず、仕事の景色。

単純に、労働力の数は増えやすい。
力仕事や危険な仕事の担い手は、集まりやすいかもしれません。
インフラ整備。
災害対応。
体力を使う現場が回りやすくなる可能性はあります。

一方で。
働き手が多すぎれば、賃金は上がりにくい。
仕事を取り合う状態が続くと。
まじめに働いても生活が安定しない人が増えます。

その空気は。
社会の温度を、少しずつ下げるかもしれません。

次に、経済の動き。

結婚が難しいと感じる男性が増えると。
選ばれるための投資が増える可能性があります。

見栄えの良い家。
車。
学歴。
貯金。
肩書き。
そういうものが、強く意識されるかもしれません。

家計の行動が、集団で同じ方向に動くと。
国全体の消費と投資のバランスも揺れます。

良い面。
資産形成が進み、長期の資金がたまりやすい。

悪い面。
使われないお金が増えると、商店やサービス業の元気が落ちる。
若者が未来を想像しにくくなる。
そんな連鎖もあり得ます。

制度も揺れます。

結婚や出産が減れば。
年金や医療を支える側が減りやすい。

そこで国は考えます。
結婚支援。
出生支援。
移民の受け入れ。
働く年齢の延長。

ただ。
どれを選んでも、別の痛みが生まれます。

支援を強めれば。
支援を受けない人の不満が増えるかもしれない。

移民を増やせば。
文化の摩擦が増えるかもしれない。

働く期間を伸ばせば。
休む時間が減るかもしれない。

答えは、1つに決まりません。

教育も変わります。

男子が多数派の学校が増える。
競争が激しくなると。
順位が強く意識されるかもしれません。

良い面。
努力が見えやすくなり、技術や研究で突き抜ける人が増える可能性。

悪い面。
勝ち負けの空気が濃くなり、負けた側が居場所を失いやすいこと。

居場所を失った人が増えると。
社会は、静かに荒れます。

家族の形も変わります。

女性が少ないと。
結婚は、希少な出来事になりやすい。

恋愛や結婚が。
個人の気持ちだけではなく。
家と家。
地域と地域。
そんな取り合いへ近づくかもしれません。

女性にとっては。
選択肢が増える側面があります。
望む相手を選びやすい。
条件を交渉しやすい。
自由が広がるかもしれない。

けれど同時に。
期待や視線が集中し。
自由が重荷に変わることもあります。

選べることは。
選ばされることにも、つながるからです。

次に、人間への影響です。

幸福の形が変わるかもしれません。

結婚や家族が手に入りにくい世界では。
仕事の達成。
趣味。
仲間関係。
それらが、より大きな意味を持つ可能性があります。

男性同士の友情や共同体が強くなり。
スポーツや創作。
地域活動が盛り上がるかもしれない。

孤独を埋める仕組みが育てば。
結婚だけが幸福ではない。
そんな価値観が根づく可能性もあります。

一方で。
不安も増えます。

誰かに選ばれないかもしれない。
家族を持てないかもしれない。
その不安が広がると。
人は短気になりやすい。

そこで。
優しさより強さを演じる人が増えるかもしれません。

強さの演技は、ときに安心をくれます。
でも。
長く続くと疲れます。
疲れた人が増えると。
社会は荒い言葉を好みやすくなる。

欲望も、変形します。

承認が足りないと。
目立つこと。
勝つこと。
それが過剰に求められるかもしれません。

逆に。
競争から降りる生き方も増えます。
静かに暮らす。
深く学ぶ。
誰にも見せない創作に没頭する。

同じ状況が。
攻撃性にも。
内省にも。
どちらにも振れ得ます。

男性が多い社会は。
防衛や治安の人手は足りやすいかもしれません。

けれど。
人手が余ると、余った人をどこに置くかが問題になります。

建設や公共事業で吸収する。
そういう発想が出ることもあります。
ただ。
それは景気や政治の都合で揺れます。

吸収に失敗すると。
空白の時間が増えます。
怒りの置き場が探されます。

怒りは、弱いところへ流れやすい。
少数派の女性や。
さらに弱い立場の人へ。
視線が集まる危険があります。

もう1つの歪み。
親密さの値段が上がること。

親密さとは。
結婚だけではありません。
誰かと安心して暮らす関係のことです。

それが貴重になると。
詐欺や搾取が増えるかもしれません。
深刻な犯罪が起きやすくなる、と心配する議論もあります。

ただ。
これも必然ではありません。
法。
教育。
福祉。
そして孤独を減らす仕組みが、どれだけ働くかで変わります。

さらに。
女性の負担が、見えにくい形で増える可能性もあります。

女性が少ないと。
社会は女性を大切に扱う方向へ進むかもしれない。
安全対策が進む。
育児支援が厚くなる。

でも同時に。
守るという名目で、行動を制限する空気も生まれ得ます。
守るはずが、囲うに変わる。
言葉のすり替えが、ここに紛れます。

視点を切り替えてみます。

多数派の男性の中でも。
都市で働く人と、地方で暮らす人では。
出会いの数も、孤独の形も違うでしょう。

裕福な家庭の男性は、選ばれるための資源を持ちやすい。
貧しい家庭の男性は、競争の土俵に上がれないかもしれない。

つまり。
男女の差だけではなく。
男性の中の格差が、目立ちやすくなります。

女性側から見ると。
自由と息苦しさが同時に来るかもしれません。

安全が上がれば暮らしは楽になります。
でも。
安全を理由に監視が増えれば窮屈になります。

若い女性は期待を浴び。
高齢の女性は見えにくくなる。
世代でも差が出ます。

子どもから見ると。
大人の焦りが、空気として伝わるかもしれません。

学校での競争。
家計の緊張。
SNSでの比較。

けれど逆に。
結婚以外の幸福を、大人が真剣に作り始めれば。
子どもは多様な未来を見られるかもしれない。

未来は、制度だけで決まらない。
周囲の大人の会話の温度でも、形が変わります。

最後に、曖昧な締めです。

人口の7割が男性という世界は。
ただ男性が多いだけではありません。

選ばれること。
居場所。
親密さ。
そして安心の作り方。

それらを、社会全体に問い続ける世界に見えます。

競争が強まり、荒れやすくなる可能性もある。
一方で。
結婚だけに頼らない共同体や。
新しいケアの仕組みが発達する可能性もある。

危うさと創造性が。
同じ土の中に並んでいるようにも見えます。

もしあなたがこの世界で。
制度を少しだけ変えられる立場だとしたら。
結婚を増やすことより先に。
誰の、どんな孤独を減らすことから始めたいでしょうか。

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